技術・人文知識・国際業務のビザ

『技術・人文知識・国際業務』とは

『技術・人文知識・国際業務』は、就労ビザのなかで9割以上を占めるビザ(在留資格)です。いわゆるホワイトカラーと言われる職種で、もっとも広く申請・取得される在留資格です。おおざっぱに言えば、「技術」は理系の仕事、「人文知識・国際業務」は文系の仕事となりますが、両者が統合されたのが、この『技術・人文知識・国際業務』です。
以下、分解して、それぞれみていきます。

「技術」は、理学、工学など自然科学分野のいわゆる理系の専門的な技術・知識を必要とする業務です。
具体的には、IT関連のプログラマ・システムエンジニアや、建築・土木、機械製造の設計、技術開発といった職種がここに該当します。

「人文知識」は、経済学、法律学、会計学、経営学などいわゆる文系の専門的な技術・知識を必要とする業務です。
ちなみに、「人文科学」は狭い意味では、法律、経済など「社会科学」を含みませんが、入管法の「人文科学」は、社会科学を含んだ広い意味で使われています。
具体的には、企画、営業、マーケティング、会計、金融、総合職といった職種です。

「国際業務」は、外国人特有の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務です。翻訳、通訳、語学指導や、広報宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発、その他これらに類似する業務です。

『技術・人文知識・国際業務』ビザに該当するには?

1.日本にある公的機関や企業(本邦公私の機関)との契約

日本にある公的機関や企業(本邦公私の機関)との契約が必要です。

外国企業の日本支店・支社も対象に含まれますが、日本に事務所がない外国企業に雇われて働くことはできません。

日本に拠点があれば、法人でない個人事業主もふくまれます。
ただ、個人事業者の場合、「事業の安定性、継続性」の点で、審査のハードルが高くなりますのでその分取得は厳しくなります。

契約の形態は、「雇用」だけに限定されず、委任契約、請負契約、業務委託契約、派遣契約も、日本にある公的機関や企業(本邦公私の機関)との契約にふくまれます。
ただし、雇用契約以外は、活動の安定性という点から、雇用契約にくらべて審査のハードルが上がります。

ところで、海外法人の日本支店の場合、日本の支店が独立した法人ではありません。そうすると、雇用契約などは、海外法人の本社が契約主体になりますが、この場合は日本の公私の機関との契約(本邦公私の機関との契約)に該当しないことになってしまうのでしょうか?

この点、現行の審査では、海外法人の本社との雇用契約などをすることで、日本にある公的機関や企業(本邦公私の機関)との契約をしたものとして扱われます。

よって、この場合でも『技術・人文知識・国際業務』ビザでの申請は可能です。

2.①理学、工学その他の自然科学の分野、②法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術や知識を要する業務、③外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務

①から③のどれかに該当する業務に従事する必要があります。
(ただし、教授、芸術、報道、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行にも該当するものは、そちらが適用されます。)
いわゆるホワイトカラーの仕事で、一定の学術的素養を背景とする専門的な技術・知識が求められ、それらに該当しない単純作業、現場業務は許可されません。

たとえば、経営学部卒業見込みのアルバイトの留学生を社員として採用し、マーケティングの業務につかせたい場合、このビザ(在留資格)が許可される可能性がありますが、アルバイト時代に行なっていた店舗のレジ打ち業務を担当させることはできません。
アルバイトが足りない日に毎回のようにレジ担当をさせると、資格外活動として違反になるので注意が必要です。
資格外活動は、本人だけでなく、雇用者も罰せられる可能性があります。
もっとも、日々の雑多な業務の流れの中で、一時的にせざるを得ない場合もありますから、たまたまやむをえず一時的に手伝ったような場合にまで、ただちに違反になるわけではありません。

法務省令に定める基準

『技術・人文知識・国際業務』は、在留資格ごとに定められた活動に該当することのほか、法務省令の基準に適合する必要があります。

1.《業務内容と学歴、実務経験について》

①理学、工学その他の自然科学の分野、②法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術や知識を要する業務

①②の場合、以下のいずれに該当することが必要です。

A従事する仕事の分野の知識に関連した科目を専攻して大学を卒業した、または、それと同等以上の教育を受けたこと、
B従事する仕事の分野の知識に関連した科目を専攻して、日本の専門学校の専門課程を終了したこと
C10年以上の実務経験
なお、ITエンジニアとして採用したい外国人が、法務大臣の告示に定める情報処理技術の資格を持っている場合、あるいは試験に合格している場合、学歴、実務経験の条件は必要ありません。

大学については、短大や大学院も含まれます。
専門学校については、日本の専修学校の専門課程を終了して「専門士」や「高度専門士」の称号を得ていることが必要です。
専門学校の場合は、日本の学校に限り、海外の学校は対象に含まれません。

学歴の条件が合わない場合、10年以上の実務経験があれば基準をクリアできます。
10年以上の期間には、大学、高校などで従事しようとしている仕事の知識や技術に関連する科目を専攻した期間を含むことができます。

③外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務(一般に「国際業務」といいます。)

翻訳、通訳、語学指導、広報、宣伝、海外取引業務、服飾や室内装飾にかかるデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に該当すること

かつ、
従事しようとしている業務に「関連する業務」について、3年の実務経験が必要です。
「関連する業務」であればよく、完全一致までは要求されていません。

ただし、翻訳、通訳、語学指導については、大学を卒業していれば実務経験は必要とされません。

2.《報酬について》

日本人が従事する場合と同等以上の報酬であること

①②③いずれの活動においても、日本人との賃金差別は認められません。
たとえば、同じ業務の日本人が月額20万円のところ、外国人は現地通貨が安いからといって月額15万円にした場合、許可はおりません。

地域や職種の違いがありますので、本来一律に言えるものではありませんが、日本で生活するには、少なくとも月額18万円くらいはあったほうがいいと思われますので、18万円以上をひとつの目安に考えておくとよいでしょう。

一般に、月額17万円を下回るとかなり厳しいようです。
月額20万円以上なら、金額だけの点でいえば、ある程度安心です。
ただし、いずれも、ほかの同じ職種の日本人と差別がないことが大前提です。

報酬は、基本給と賞与のことをいい、通勤手当、住宅手当、扶養手当など課税対象とならないもの、福利厚生的なものは含みません。

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