技能ビザ(調理師)の概要
技能ビザ(在留資格)は、熟練した技能労働者を外国から受け入れるためにもうけられたもので、日本にある企業や公的機関との契約にもとづいて行う、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動が該当するビザ(在留資格)です。
具体的にもっとも多いのは、外国料理の調理師ですが、ほかに外国特有の建築技術者、外国特有製品の製造・修理、宝石・貴金属・毛皮加工、スポーツ指導者、動物の調教、ワインのソムリエ、なども、技能ビザの対象となっています。
以下、調理師のケースに絞って書いていきます。
技能ビザに該当する活動の条件
1.日本にある企業や公的機関との契約に基づいて行う
日本の会社や店に直接、雇われて給料を受ける事が必要です。
雇用契約だけでなく、業務委託(請負)契約も対象になります。
中華料理店やインド料理店などの飲食店は、個人事業も少なくありませんが、個人事業の形態でも対象となります。
なお、料理人として働いていた外国人が独立して店を持つ場合は、技能ビザから、経営・管理ビザに変更する必要があります。
2.「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する」
ファミレスやチェーンでも出されるような日本化されたラーメン、ちゃんぽん、カレーライス、皿うどんを作るような場合は該当しません。
起源が中国やインドなどであっても日本化され、日本人なら誰でも作れるような料理は、「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務」とは言えません。
中華料理の専門店でコースメニューもあるような店の調理や、カレーであれば、本場のインドカレー専門店の調理なら、技能ビザの対象となります。
法務省令に定める基準
技能ビザは、上陸許可基準が定められており、具体的な職種ごとに列挙されています。
調理師のポイントは次のとおりです。
1.外国において考案され、日本において特殊なものを要する業務
「外国において考案され」たものなので、日本の一般的な料理の調理は対象になりません。
外国から来た料理でも、チェーン店などで日本風にアレンジされたラーメン、カレーのような料理の調理は、熟練した技能を要するものではなく、また日本において特殊なものとは言えません。
中華料理やインドカレーの専門店で、コースメニューがあると有利です。
従業員は、ホールや会計担当のスタッフがいることが必要です。
調理師だけだと、調理師が、資格外の活動業務を行うと判断され許可されません。
店の規模も20席から30席以上あることが望ましいです。
席数が少ない店、カウンター席だけのような店の場合、調理師が調理専従でないとみなされ許可されにくくなります。
なお、申請対象の調理師が、営業許可書の名義や、店の賃貸契約書の契約当事者になっていると不許可になります。
仮に独立して店の経営者になる場合は、技能ビザから経営・管理ビザに変更する必要があります。
2.実務経験が10年以上あること(タイ料理は5年以上)
年数には、外国の専門学校などで料理にかかわる科目を専攻した期間を含めることができます。
実務経験の証明には、以前の店から在職証明書を発行してもらわないといけません。
在職証明書は虚偽の記載が多いので、入管からは厳しくチェックされます。
矛盾があると在職証明書の信ぴょう性を疑われますので、正確に書かなければいけません。
10年という期間は、おおよそ10年でだいじょうぶだろうと思う人もいますが、1ヶ月不足しても許可されませんので、注意してください。
タイ料理については、経済協定により、初級以上の資格証明書があり、直前1年間にタイ料理人として妥当な報酬を受けて働いていれば、5年以上の実務経験で基準を満たします。
3.日本人が従事する場合と同等以上の報酬
日本人との待遇差別がないことが条件です。
月額報酬は、技術・人文知識・国際業務ビザと比べて低くても許可され、月額15万円程度でも許可され得ます。
ただ、月額15万円程度では家族を扶養することは難しいですから、家族を呼ぶ(家族滞在ビザ)のは許可されにくくなります。
4.飲食店営業許可を受けていること
飲食業は、営業許可を受けなければ営業できません。
したがって、飲食店営業許可を受けないで申請すると、事業の適正性がないと判断され不許可となります。